大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所宮崎支部 昭和26年(う)160号 判決

新刑事訴訟法においては、所論のとおり捜査官のなす起訴前の押収、捜索手続と、起訴後の裁判所のなす押収、捜索手続とは判然区別しているところではあるが、しかし、同法第二二二条によれば、裁判所のなす押収または捜索に関する同法第一一八条乃至第一二四条の規定は、検察官、検察事務官または司法警察職員が同法第二一八条、第二二〇条及び第二二一条の規定によつてする押収または捜査について準用しているし、なお、同法第二九八条以下の証拠調に関する規定に徴してみれば、裁判所が、検察官から、捜査官が押収または領置した証拠物の取調の請求を受けた場合には、これにつき、公判廷において証拠調をする必要はあるが、所論のように、これを裁判所において更めて押収または領置するの必要はなく、また、これを裁判所において更めて押収または領置したものでなければ沒収または還付の言い渡しをすることはできないという法理は存在しないものといわざるを得ない。そこで、今、本件につき記録を調べてみれば、原判決が沒収を言い渡した所論の船舶重宝丸は、証拠物として原審公判廷に提出されず、従つて、これにつき証拠調のなされなかつたことまた、領置の手続のなされた形跡のないことは所論のとおりであるが、元来かような船舶を公判廷に顕出することは不可能であるし、しかも、原審第二回公判調書の記載によれば、検察官から提出された門司税関大蔵事務官河野郁三作成にかかる前記重宝丸に関する差押目録については、被告人等はいずれもこれを証拠とすることに同意し、かつ、同船舶の存在についても別に争なく、原裁判所においても同差押目録につき適法な証拠調を施行していることが認められるので、同船舶自体が公判廷に顕出されず、また、証拠調がなされず、かつ、それにつき原裁判所において押収または領置の手続がとられなかつたとしても、前説示するところにより、関税法の規定により、これを沒収しても何等差支ないものとみるのが相当である。さすれば、論旨は独自の見解のもとに原判決を非難するもので理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!